年度末から年度初めの繁忙期も、
ようやく落ち着いてきましたね。
そんな折、会社法改正に向けて、
再度、知識をブラッシュアップしていたところ、
会計限定監査役や社外役員にばかり気を取られて、
もっと身近な論点を見過ごしそうになっていました。
募集株式の総数引受契約です。
中小企業(非公開会社)が増資する局面においては、
事前に引受先が決まっていることがほとんどですから、
総数引受契約を用いるのが合理的かつ迅速な方法となりますので、
利用する機会は非常に多いのですが、
この度、同スキームの根拠たる会社法205条に第2項が追加となります。
これによって、
改正前までは、取締役会の設置の有無にかかわらず、
募集事項の決定から総数引受契約の承認まで、
株主総会の決議だけで足りたところ、
改正後は、取締役会設置会社においては、
株主総会の決議に加えて、
原則、取締役会での承認が必要となり、
手続きが少し煩雑になります。
もっとも、承認に関しては、別段の定めを定款で設けることができますので、
手続きをシンプルにする要請がある場合には、
定款の定めを積極的に利用することになるでしょう。
具体的には、
承認機関を株主総会や代表取締役にする例が多くなりそうです。
しかし、その場合、2回目以降の登記申請時においては、
添付書類として定款が必要になってしまいますので、
それはそれで面倒です。
というわけで、奥の手、「定款附則」への時限規定で都度対応するのが、
スマートかもしれませんね。
ちなみに改正後の会社法205条は以下のとおりです。
第205条 前二条の規定は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。
2 前項に規定する場合において、募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
ではまた。
赤尾