こんにちは、司法書士の赤尾です。
いよいよ明日、平成27年2月27日に改正商業登記法・商業登記規則が施行になります。
今回の改正は、実務への影響も比較的大きい分野の改正ですから、不備なくマスターしておく必要があります。
詳細については、法務省のHPが分かりやすいので、→役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります(平成27年2月27日から)
そちらをご参照いただくとして、どんなシチュエーションで改正法の影響があるのかを検討してみたいと思います。
まず、今回の改正は、以下のとおり大きく3区分することができます。
1.趣旨:虚無人名義の登記の防止
内容:設立登記、役員就任登記の際、
①就任承諾書に住所の記載が必須になった。
②再任する役員及び就任承諾書に印鑑証明書を添付する役員以外の役員については、
住所・氏名の記載がある公的書類又はその写し(原本証明が必要)を添付しなければならなくなった。
2.趣旨:虚偽辞任登記の防止
内容:代表者のうち、登記所に代表印を届け出ている者が辞任登記を申請する場合、
当該代表者は、辞任届に代表印を捺印するか、個人の実印を押し+ 印鑑証明書を添付しなければならなくなった。
3.趣旨:婚姻前の氏、いわゆる通称に対する配慮
内容:設立や就任登記の際、役員の婚姻前の氏を記録するよう申し出ることができるようになったなど。
以上が改正の概要となりますが、これを受けて実務において具体的にどのシチュエーションで変更が生じる可能性があるのでしょうか。
① 取締役会設置会社・理事会設置法人・監査役(会)設置会社・監事設置法人の設立時又は役員就任時
② 代表印届出をした代表者の辞任登記時
③ 通称でビジネスされている役員へのアナウンス
①について
改正前、役員会設置法人や監査役・監事設置会社において、
代表者以外の役員の就任承諾書(あるいは議事録)には、住所の記載も公的な書類の添付も不要でした。
それゆえ、特に外国人が代表以外の役員に就任するようなケースでは、その利便性から、あえて取締役会設置会社等を利用する機会も多かったように思います。
しかし、今回の改正によって、実質、新規の役員就任時には、常に何かしらの公的書類の準備が必要となりましたので、取締役会設置会社等の機関構成は、ガバナンスを重要視したいという要請から選択されるという性質をこれまで以上に強めるように思います。
一方、役員会・監査役・監事の非設置会社・法人においては、特に影響のない改正となりますので、大多数の中小法人にとって、注意すべき点はないでしょう。
②について
司法書士が関与する場合、これまでも辞任登記にはかなり気を使っているはずですし(辞任届に認印が押してあればそれだけでOK、っていう司法書士などいないはずです。)、そもそも代表印で押印するよう指示している場合が多いと思われますので、特段目新しさは感じませんが、これまで以上に気を使わなければならなくなったことは確かでしょうし、要件を厳格にするのは基本的には賛成です。
しかし、一方で、辞任の意思は本来口頭で足りるところ、実質、辞任届ないしは株主総会に出席した役員が席上辞任の意思を表明した場合以外、これに対応できる添付書類は明らかでありませんでしたが、今回の改正でもこの点は何らフォローされておりませんし、その他、先例・通達といったレベルでも未対応であるのはとても残念です。現在、役員の高齢化も進んでいるところ、辞任済の役員と連絡が取れないケースは相当数あるものと推測されるますので、本改正では、要件の厳格性を強めた分、一方では多様性も加えていただきたかったところです。
③について
通称の問題は、夫婦別姓の問題として、最高裁では大法廷に回付されるなど今タイムリーな問題ですが、婚姻前の氏でそのままビジネスしている方は結構多いので、これからは、「婚姻前の氏を併記することもできますが、いかがいたしますか?」って逐一聞くことになるのですかね。そうすると、「婚姻前の氏のみで登記することはできませんか?」と返されるでしょうから、「それはできません。」と回答せざるを得ないのですが、時期が時期だけに少し気を使うなのがという印象です。
以上、改正商業登記法に関する雑感でした。
赤尾