早速、前回の「思考を整える ~役員への貸付をBSから消すには①~」の続きからです。
まず最初に、これはDESの事案ではありません。
本事案は、役員への貸付金を消滅させるのがミッションとなりますので、
会社に対する債権の株式化=DESとは、逆の事例となります。
そして、本事案は、
同役員が100%株主であることを前提とします。
では、早速、検討してみましょう。
この事案の場合、考えられるアプローチとしては、
①履行等によるリアルなアプローチ
②資本取引を駆使したヴァーチャルなアプローチ
③その他のアプローチ
の3種類があると考えます。
①は、債務→弁済→消滅 という原則に従い、
債務を履行することによって貸付金を消滅させるアプローチです。
このアプローチによる場合、
役員が、貸付元金+利息に相当する額を金銭ないしは現物を提供して弁済することになりますので、
当然、同役員がこれに対応する資産=ストックを有していなければなりません。
あるいは、役員への給与=フローから天引き的に相殺することで消滅させていくこともできます。
いずれにしても、①は、
フローとストックという個人資本が現実的に減少することによって達成されるアプローチとなります。
なお、とても重要な視点として、
司法書士であっても、
「型」を思考していくうえでは、
法人会計と税法を決して無視することはできませんので、
これらについても、パラレルに検討を加えていかなければなりません。
そこで、①のアプローチの場合のBSと税法を思考すると、
これは、とてもシンプルで、
・BS上、資産の部の貸付金が消滅し、現金が増加する。
・税法上、会社が受取る利息には、所得税が係る。
・代物弁済による場合、現物の評価額は、正当な根拠をもって行い、現物の種類によっては、
譲渡に係る税金が生じる可能性がある。
という点に注意して、比較材料に加えていきます。
もちろん、これらは税理士や会計士とも、
確認し合いながら進めていくことになるでしょう。
こうして、①のアプローチに関する思考をまとめていくと、
検討すべき事項は、以下に集約されることになります。
第1:貸付債権に対応するストックあるいはフローが存在するどうか
第2:代物弁済の場合、その評価額に税法上の妥当性があるかどうか
第3:フローとの相殺による場合、回収期間が長期にわたる可能性があり、消滅リミットとの関係からこれを許容できるかどうか
第4:生ずるであろう税金の総額に関する予測
の4点です。
従って、これらを基礎として総合的に検討することになるとは思いますが、
ここで、さらに当たり前の前提に触れなければなりません。
それは、我々に本事案の相談が持ち込まれた時点で、
収入や資産がリアルに減少するアプローチは受容したくない、
あるいはできないというケースががほとんどであるという点です。
つまり、①のアプローチであれば、
我々司法書士でなくとも、すでに税理士や会計士によって、
すんなりと妥当な解決策を提示しているはずですから、
その場合の我々の役割は、リーガルチェックに留まります。
そうすると、本事案のように、
「役員への貸付をBS上から消したい」という相談があった場合には、
イコール、①のアプローチ以外に方法はないでしょうか、という相談に読み替えて、
検討することになるわけです。
というわけで、
実際には、②あるいは③のようなアプローチを思考していくという流れになるわけですが、
長くなりますので、
これらについては、次回のポストにて記していきたいと思います。