司法書士の赤尾です。
少し前になりますが、
「心を整える」というタイトルの書籍が発行されました。
サッカー日本代表の長谷部選手が執筆したもので、
発行当初は、書店のゴールデン・エリアにも陳列されるなど、
とても目立っていたことを記憶しています。
私自身、残念ながら、まだ同書を読む機会をもっておりませんが、
とても良いタイトルだな、と深く印象に残っています。
「整える」という動詞に、静かな能動性を感じ、
好感を持ったのです
と、同時に、
司法書士という仕事において、
整えるべきは一体何であるかを考えてきました。
もちろん、多くの職業がそうであるように、
司法書士という職業においても「心」を整えるべきであることはいうまでもありませんが、
私は、「心」よりも大事にしているものがあります。
それが、「思考」です。
司法書士の仕事は、
「型」を提供する仕事であると評価いただくことがあります。
登記=型 です。
数えたことありませんが、
現行法においては、おそらく何百という登記の「型」が存在しますので、
鍛錬によって、これらを習得し、
自在に操るのが司法書士である、
というのが職業的評価のようです。
そうすると、
より多くの「型」を習得していればいるほど、
優秀な司法書士という評価になるわけですが、
残念ながら、実際の実務において、
特殊な「型」を繰り出すほどの機会は決して多くありませんし、
事実、多くの取引において利用される登記は、
ウィキペディアで調べても習得できそうなレベルの型も多いですから、
結局は、どの司法書士が優秀であるのか、
あるいはどの分野に強みを有している司法書士であるのかということについて、
委任者の多くは、関知しうるところではないですし、
また、関心すら持っていないのかもしれません。
しかし、これらは、提供すべき「型」が、
はじめから決まっている場合のことです。
私が普段から関わっている取引でいうと、
不動産売買や本店移転の登記が、
これらに該当するでしょうか。
誤解や反論を恐れずにいえば、
これらの登記は、どの司法書士が関わったとしても、
結果は、変わりませんし、、
むしろ変わってはならない性質の登記です。
一方、ご相談をいただいた時点では、
提供すべき「型」が決まっていない種類の仕事があります。
紛争性のある相続事案や、成年後見などがこれに該当しそうですが、
私の場合でいうと、その多くを会社や法人といった企業体との関わり合いの中で経験しました。
いわゆる企業法務というやつです。
そして、実感したのは、
企業法務において求められるのは、
「心」でも「型」でもなく、
論理的に思考する力だということです。
どれだけ論理的に思考できるかによって、
結果が変わってくるという経験です。
(もちろん提供すべき型に精通していなければ、
論理的に思考する基礎がないので、
「型」はやはりとても重要ですが。。。)
というわけで、
今後、「思考を整える」とタイトルしまして、
私が、これまでに接した「思考」を試されるような事案を
機会あるごとに、ポストしていきたいと考えています。
それでは、早速、初回のお題にいきたいと思います。
「役員に対する貸付金をBS上から消したい。」
という相談事案について検討をしてみたいと思います。
なるほど、
ぱっと思いつくだけでも、
方法はたくさんありそうですね。
では、どのチョイスがベターなのか、
そして、そこに至るまでの法的プロセスはどう根拠付していくのか、
続きは、次回のポストにて記したいと思います。
赤尾