司法書士の赤尾です。
当事務所は、不動産決済の登記をメイン業務とする事務所ではありませんが、
それでも、ここ最近、立会の引き合いをいただくほどに、
現在、都心部での中古不動産の取引は堅調なようです。
コストプッシュインフレによって新築価格は上昇し、
需給のバランスによって供給数が少なくなったことから、
相対的に割安感の強い中古不動産が買われているのだと思いますが、
史上最低を更新し続ける金利の安さも、
実需層には、大きなファクターとなっているのではないでしょうか。
実は、私も、こうした景況感を肌で実感すべく、
先週末、住宅金融支援機構の無料相談会に行ってみました。
(買う予定は全くないので、あくまで市場調査の一環です。)
そこで、まず、驚いたのが、
一般的には信用力の低いとされる私のような個人事業主であっても、
びっくりするような金額が借入できることです。
もちろん正式な審査ではなく、
ファジーなものですが
(とはいっても、明確な基準が設定されておりますので、それなりに確度は高いはずです。)、
日本発サブプライムになりはしないかと心配するほど、
その基準は緩やかで、画一的に過ぎるものだと感じました。
事業者にとっては大変ありがたいのでしょうが、
無駄に最大値を超えるようなレバレッジが動作しやしないかと、
専ら心配になります。
データ上も、当事務所での取扱い件数としても、
住宅ローン特則を利用した個人民事再生案件は減少傾向にありますが、
これは、中小企業等金融円滑化法による住宅取得者への貸付条件変更の効果にすぎませんから、
潜在的には、申立相当に該当するケースはかなりあるはずですし、
この堰が決壊したらどうなるのでしょうか。
実力値以上の貸付は、
購入時の買主とデベロッパーしか喜びません。
話が少しそれましたが、
次に、本題の金利についてです。
仮に、今、引き渡しとなった場合、
35年固定金利で年1.47%と言われました。
2~3年前の2%台で、超低金利といわれてましたので、
もはや異次元の低金利です。
しかも、これだけではありません。
諸々条件はありますが、
借入当初5年間は、
1.47%からさらに△0.6%の金利が適用になる可能性もあり、
「いえいえ、そこまでしていただかなくても。。。」と、
逆になんだか申し訳なくなるほどです。
では、この低金利は、一体どの程度の威力をもっているのでしょうか。
仮に、上記の条件で借り入れをした場合(①)と、
年利2%で借り入れした場合(②)を平均的な借入額であろう3000万~4000万で比較すると、
借入額3000万円→①総支払額 約3745万円
②総支払額 約4173万円
その差額:約428万円
借入額4000万円→①総支払額 約4993万円
②総支払額 約5565万円
その差額:約572万円
となります。
強烈ですね。
借入額ベースで10%以上の差が出ます。
強烈な追い風です。
もっとも、人口減少やオリンピック後を考えると、
長期的に、不動産価格は下落していくという見方も根強いですから、
上記の金利差など、あっという間に吸収してしまうほどの値下げが、
いつくるとも限りません。
そうすると、購入の是非は、
最終的に個々人の判断に委ねるしかないのですが、
今後の不動産価格の上下が、不確実な将来の推測であるのに対し、
超低金利での借り入れは、確定的な将来を契約することですから、
持家派にとっては、購入を検討しても良い時期とはいえるでしょう。
(ただ、レバレッジを最大化しようとするのは、大変危険ですよ。)
司法書士としては、
このまま、不動産取引が堅調に推移することを願っている一方、
いかにも焦げ付きそうな住宅ローンが増えることも懸念しています。
とはいえ、その場合でも、個人民事再生や任意売却のお手伝いをすることも可能ですから、
司法書士って、意外と不動産市況をヘッジできている職業の一つなのかもしれません。