司法書士の赤尾です。
2015年が始まって、早16日が過ぎました。
遅くなりましたが、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、企業法務界にとっては、5月1日に施行予定の会社法改正が、今年最大のTOPIXの一つとなるでしょう。
そして、改正会社法の中でも、
特に司法書士的に重要となるのが、以下2点です。
① 会計限定監査役に関する登記
② 社外取締役・社外監査役に関連する登記
①の会計限定監査役については、突き詰めると、
平成18年の新会社法施行『前』に設立した株式会社の大多数と、
施行『後』に設立した株式会社の大多数の間で存在する世代間格差ともいえるような問題ですが、
特に登録免許税という点に関しては、「実質非課税」ということに決着するようで、安心しました。
機関構成が、今より厳格に要件された新会社法施行『前』の株式会社のうち、
同法施行後に、より小さい単位で構成する機関に移行した会社は、決して多くありません。
業務執行という観点から移行したほうベターであるにも関わらず、です。
その原因は、いうまでもなく、移行に伴う登録免許税の負担が大きかったことにあります。
そんな中、仮に本年の改正で、会計限定監査役の登記において、
登録免許税法3万円区分が適用されてしまうと、
平成18年前株式会社の大多数にとっては、
実質増税となり、世代間価格差は益々拡大するところでした。
この弊害については、日司連からも法務省に対する要望書が出ており、
無事に、「実質非課税」という結論に落ち着いたようです。
(自民党政権ということも、ほんの少しポジティブに働いたかもしれませんね。)
そして、②の社外役員の関連については、
大多数の中小企業にとっては、関係ない改正だと思います。
社外役員の設置や登記が義務付けられるケースは決して多くありませんので、
上場会社と上場準備会社が、その対象のほとんどとなります。
社外取締役の設置義務が見送られたのはとても残念ですが、
社外性要件については、一部緩和(期間)と追加設定(範囲)がされることになり、
特に追加設定によって、社外役員に該当しなくなる人間が増えますので、
社外役員の設置義務のある会社(特別取締役の制度導入、監査役会設置会社など)で、
かつ、社外役員が欠員してしまう場合には、
代替人員の確保について、速めに対処するようお願いしています。
また、実は、中小企業でも、社外役員の導入が徐々に浸透しております。
そもそも社外役員の立法趣旨は、独立性確保から馴れ合いを防止することによって、
投資家からの信頼性を担保するのが目的ですから、
主に上場会社やそれに準ずる規模の会社で導入されるのは当然です。
しかし、昨今、特にファイナンシャル・リテラシーの高い独立系の人間がマーケットに増えてきたことから、
財務に弱みを抱えている会社が、そうした人材を上手に社外監査役として招聘することで、
顧問税理士よりも、さらに高密な財務経営を推し進め、競争力を確保しているケースは少なくありません。
もちろん、ファイナンシャル・リテラシーの高い人材は、総じてリーガル・リテラシーも高いので、
通常、社外監査役への就任承諾と責任限定契約はセットとなります。
一方で、経営者としては、
任期設定や解任権の行使によって、
ワークしない社外役員をコントロールできますので、
社外役員は、十分にパフォーマンスを発揮する必要性が生じますから、
両者は、ビジネスという企業活動において、うまくバランスするのです。
これが、いわゆる普通の顧問税理士であれば、
記帳して、仕訳して、申告書作成して、
おまけとして、調べれば誰でも分かるような節税法を伝授してもらって終わりかもしれません。
その場合、顧問料の実質はコストにすぎません。
しかし、財務は本来コストとして考えるべきではなく、
インヴェストメントを生むものであると考えるような、
先進的な若手経営者は確実に増えています。
その結果が、社外役員の選任につながります。
というわけで、今回の改正は、責任限定契約の締結のみを理由として、
社外役員である旨の登記をしている会社にとっては、
社外役員である旨を抹消しなければならないので、
そんな先進的な企業にとっても、少しだけ影響があることになります。
以上が、司法書士的な、私の会社法改正に関する雑感です。
しかしながら、今後、法人税の減税も予定されており、
海外資金による国内投資をいかに呼び込めるかが、
景気回復の大きなファクターとなるはずです。
そうすると、当然、コーポレート・ガバナンスのさらなる強化が必要で、
今回の改正も、これがメインテーマとなっていたはずですが、
随所で思いきれなかったなというのが、率直な印象です。
グローバルには、一歩近づいたかなとは思いますが、
こんなスピードで大丈夫か?とも感じた、
そんな会社法改正です。
赤尾